【家事か地獄か】家事の見方どころか、生き方が変ってしまうかも:読書感想
「家事か地獄か」の書名に惹かれて呼んだ本は、ユーモアに溢れた読みやすいエッセイであり、シンプルな生き方の指南書であり、老若男女だれもが幸せを感じながら心穏やかに生きる方法論を、ある種 "極端" なかたちで示してくれる本でした。
便利な家電がもたらす不幸
"極端" と言ったのは、著者が炊飯器も電子レンジも掃除機も洗濯機も冷蔵庫さえも無い生活をしているからです。
そんな生活をどう実現しているかは面白く、なるほど納得でハウツーとしても役に立つのですが、それより大事な部分は 👇 ここでした。
洗濯機がある ➡️ まとめて洗うと効率的 ➡️ 週に一度のまとめ洗い
- すると、一週間分の下着やタオルが必要 ▶️ 物が増える ▶️ 片付かない ▶️ ヤな気分
- さらに、洗ってない汚れ物が常にたまっている状態 ▶️ これまたヤな気分
会社勤めの人などは「週末まとめ洗い」せざるを得ず、洗濯機を持たない生活は現実的ではないのだけれど、一週間分の着替えが必要とか、平日は常に汚れ物を目にして過ごす弊害も確かにあるわけです。
さらに著者はこうも言います。
「便利なものがあると出来ることが増える。出来ることはやがて "やらなければならないこと" に変わっていく」
携帯電話はどこでも話ができて便利ですが、それ故に連絡が付かないということは許されなくなりました。機械化とか IT 化とか、便利で快適な生活を求めて発展してきたはずが、便利なモノやコトに追われ圧倒される生活になってはいないでしょうか。
家電がもたらす "不幸" の指摘は、「家電=便利=幸せ」と思い込んでいた私にはハッとさせられるものでした。
キラキラした可能性地獄
著者は、冷蔵庫も洗濯機もない生活の前は「昨日より今日、今日より明日、よりリッチになるためにキラキラした "可能性" に向かって生きるのが豐かな人生」と思っていたそうです。
毎日美味しいものを食べ、風呂トイレ別の広い部屋に住み、最新機種のスマホを持って、季節毎に新しい服を着る。それらを叶えることが成功であり、叶えられなかったり、諦めたりしたら "負け組"と呼ばれる。
負け組に落ちるプレッシャーを受けながら、今より豐かになる可能性を追い求める生活。可能性をひとつ叶えたら、その上の可能性(より美味しいもの、より綺麗で似合う服)が見えてくる。
可能性とはつまり今ここには無いものです。無いものを求め続ける生活、果してこれが楽しい毎日、豊かな人生でしょうか?
私はこの問いで、自分が意識せずに囚われていた "幸せの常識" が突き崩されました。
この「シンプルな生き方の指南書」にあることを全てやる必要はありません(と言うより、多分出来ない)。そっくりそのまま真似することはなくて、無理なくできることを実践したり、考え方を参考にするだけでも、きっと生き方に変化が現れるでしょう。
本の一部をチラリと読めます → 家事か地獄か|婦人公論.jp